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債務整理(借金整理)の内容

 
 債務整理の方法は、大きく分けると、裁判所が関与するものと、ほとんど関与しないものとに分けられます。裁判所が関与するものが、
 ★自己破産手続
 ★個人再生手続
 ★特定調停
の3つで、
 裁判所がほとんど関与しないものが、
 ★債務任意整理です。
 それぞれについて、以下に簡単にご説明します。

1 @自己破産手続

 破産とは、
貴方の財産・収入より、借金などの債務のほうが多くなってしまった場合に、貴方の財産をお金に換(か)えて、そのお金を貸主などの債権者に対して公平に分配し、借金などの債務をこれ以上支払わなくてもよいようにする制度です。
 貴方の財産をお金に換える手続は、裁判所が選んだ
破産管財人(はさんかんざいにん)が行いますが、貴方の財産の程度によっては、破産管財人が選ばれることなく破産手続が終了します。
 こういう場合を
「同時廃止(どうじはいし)」と言います。

 したがって、
同時廃止の場合、貴方の財産を処分してお金に換えるという手続きは行われません。なお、同時廃止になるか否かは、あなたがどのような資産をどの程度持っているかによって、一定の基準に基づいて裁判所が判断します。詳(くわ)しくは弁護士にお尋(たず)ね下さい。

 また、
破産者になっても、戸籍や住民票に「破産者」と書かれることはなく、選挙権を失うこともありません。
 
ただし、破産手続が始まってから、裁判所による免責許可が下りるまでは、市町村において身分証明書を取得する際、破産手続開始決定を受けていない旨の事実を証明してもらうことはできませんし、警備員、保険外交員、宅地建物取引業者など、一定の職業につけなくなりますので、ご注意ください。もっとも、免責許可が下りれば、こういった制限はなくなりますので、ご安心ください。

 
なお、破産手続が始まった後、裁判所から「免責許可決定」を受けることにより、残っている借金など、債務の支払いをしなくてもよいようになります。

 
ただし、免責の許可が下りても、税金や社会保険料の滞納金や、わざと、もしくは、とんでもない不注意で人を殺したり、傷つけてしまったりしたような場合の損害賠償(そんがいばいしょう)債務、離婚した後、相手のもとで育てられることになった子どもに支払う養育費等については、そもそも免責の対象とはなりません。

 また、免責の目的は、誠実な債務者に立ち直る機会を与えるというものですから、以下のような事情がある場合には、免責が受けられません(以下のような事情を、「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」と言います。)。

  ・貸主などの債権者に損害を与える目的で自分の財産を隠したような場合
  ・無駄づかいやギャンブルで、持っている財産を減らしたり、借金などの債務を増やしたような場合
  ・クレジットで商品を購入し、すぐにその商品を業者に転売して現金化したような場合
  ・すでに借金などの債務を返すことができない状態であることを隠してお金を借りたような場合
  ・以前にも破産手続で免責の許可を受けたことがあり、それから7年たっていない場合

 なお、これらの事情があっても、裁判所の判断により、借金などの債務の一部を自分から支払ったり、反省文を書いたりすることで、免責してもらえる場合もあります。詳しくは弁護士にお尋ね下さい。

2 A個人再生手続

 個人再生手続とは、
自分の財産や収入を全部つかっても、借金など全ての債務を支払えなくなるおそれのある場合に、借金などの債務を少なくしてもらったうえで、その少なくしてもらった債務を分割で返済していくという再生計画を裁判所に許可してもらって、残りの支払義務を免除してもらう制度です。

 破産・免責手続と違って、職業の制限や免責不許可事由などの制限はありませんし、住宅ローンがある場合でも住宅を手放すことなく負債の整理が可能です
(ただし、住宅ローン以外の債務について、住宅に住宅ローン以外の抵当権などの担保が付けられていた場合は除きます)。

 もっとも、この手続きをとるためには、これから定期的な収入が見こめる、あるいは給料などの定期的収入を過去2年間にわたって受け取っているなど、収入に関する要件が必要となります。また、返済は原則として3年間の分割払いとなっています。住宅ローンを除く債務を合計した金額が5000万円を超えてしまう場合には、この手続を利用することができません。

 なお、いくら借金などの債務を少なくしてもらえるとは言っても、これ以上は少なくしてもらえないという
最低弁済額が決められていて、これは、原則として、

 住宅ローンを除く債務の合計が1500万円までの場合、その5分の1の返済(但し、最低100万円)
 住宅ローンを除く債務額が1500万円〜3000万円の場合には300万円の返済。
 住宅ローンを除く債務額が3000万円〜5000万円の場合は10分の1の返済。

とされています。
 たとえば、全ての債務の合計金額が1000万円だった場合、200万円より少なくはなりません。また、貴方の資産の状況や年収によっては、この最低額以上の金額を支払わなくてはいけない場合があります。具体的な目安については弁護士にお尋ね下さい。

3 B債務任意整理

 債務任意整理とは、
裁判所の手続を利用するのではなく、弁護士が、サラ金業者などの各債権者に対して、個別に返済額や支払方法などについて交渉を行うというものです。

 具体的には、サラ金業者などの債権者から、貴方と債権者との間のこれまでの取引の記録を提出してもらったうえで、
利息制限法という法律に基づいて、利息や元本の充当について引き直し計算を行って残元本を算出します。

 要するに、サラ金業者などの債権者は、法律で決められた以上の利息を貴方から受け取っていたわけですから、きちんと法律で決められた利息に引き直して計算して、貴方の借金が本当はいくらなのかを確定するということです。

 そして、この引き直された元本を基準に、返済方法を話し合うというものです。サラ金業者などの債権者と長い間取引がなされているような場合には、払いすぎた貴方の利息もかなりの金額になっているものと思われますので、残元本をかなり少なくできる場合もあります。

 場合によっては、払いすぎた貴方の利息が多すぎて、残元本がゼロになるどころか、払いすぎた利息分のお金(いわゆる「過払金(かばらいきん)」と呼ばれるものです。)を返してもらえることもあります。

 ただし、クレジットによる物品購入(ショッピング)の場合には利息制限法の適用がありませんので、債務金額を少なくすることは困難です。

 したがって、サラ金業者等と長い付き合いがあり、物品購入によるクレジット残債務金額はそんなに多くないという方に向いているといえます。

 もっとも、あくまで話し合いですので、相手方がこちらの提示した返済案に納得しない限り合意できませんし、そもそも取引履歴を一切出さないという悪い業者もおりますので、債務任意整理が可能かどうかは正にケースバイケースです。具体的な見こみについては弁護士にお尋ね下さい。
 
4 C特定調停

 特定調停とは、
自分の財産や収入を全部つかっても、借金など全ての債務を支払えなくなるおそれのある場合に、簡易裁判所(かんいさいばんしょ)において、サラ金業者などの債権者との間で、返済金額や支払方法などについて話し合いをする手続です。お互いが合意する内容どおりの返済を行っていくわけですから、返済が可能な程度の収入が貴方にあることが前提となります。

 特定調停の場合も、任意整理と同様に、利息制限法による引き直し計算を行い、計算後の残債務金額が解決の基準となります。したがって、内容的には任意整理とほぼ同じですが、簡易裁判所の調停手続において行うという点が異なります。

 もっとも、あくまで話し合いですので、相手方がこちらの提示した返済案に納得しない場合は不成立となります。また、裁判所は、原則として中立的な立場に立ちますので、業者と貴方との間の知識や交渉能力の差によっては、必ずしも妥当な解決が図られない場合もあります。

5 受任通知について

 上記のいずれの手続を選択するにせよ、弁護士が負債整理を依頼され、正式に受任した場合には、債権者宛てに、受任通知(じゅにんつうち)という文書を発送します。

 そうすると、貸金業者は、原則として,貴方に対して直接支払を請求することができなくなります。

 なぜなら、貸金業者は、貸金業法という法律により、弁護士から受任通知を受けた後は、正当な理由なく債務者に支払請求をすることが禁止されているからです。

 つまり、
貸金業者の取り立てを止めさせるためには、受任通知を発送する必要があるのですが、そのためには債権者である貸金業者等の名称、支店名、住所、郵便番号などをできるだけ正確に把握する必要があります。

 もちろん、ある程度の情報があれば、弁護士が調査して、債権者の所在地などを明らかに出来る場合もありますが、貴方の債権者がどこのだれであるのかは、結局のところ貴方しか分かりません。ですので、弁護士に負債整理を相談する場合には、債権者の名称、支店名、住所、郵便番号、およその債務額をできる限り正確に記入したメモのようなものを持参していただけると、その後の手続きが正確かつ迅速に進みます。

 なお、上記いずれの手続きを採るにせよ、信用情報機関への事故登録(いわゆるブラックリスト)は避けられません。従って、普通の消費者金融機関からは借入れができなくなります。くれぐれもヤミ金融等には手を出さないよう注意して下さい。


Q&A抜粋

Q:今月の返済もできないのですが、どうしたらよいでしょうか?

A:弁護士に正式に委任をすれば、いずれの方法でも一旦、借金の返済をとめることになります。
 返済を止めても、弁護士が正式に委任を受けて手続に入った旨の通知書を発送すれば、消費者金融業者は、ご本人の家に取立に来たり、電話・手紙などでの請求が来ることはありません。

Q:相談に行くにはどうしたらいいですか?すぐにはお金もありませんし、何を持っていったらよいのかも分かりません。

A:まず、電話で予約を取ってください。弁護士費用の支払方法については、生活の立て直しを図るのですから、それぞれのご事情に応じて、ご相談にのっています。
 持ってきていただくとよいものは、たとえば、印鑑、債権者の一覧表(住所・債権者名・債権者ごとの完済や借換分を含めた一番最初の借入時期、およその現在の借入額、保証人の有無、担保の有無などを書いたもの)、財産の状況や収入など生活状況の分かる資料などです。


(過払金返還請求について)

Q:サラ金業者から借金をして、何年もの間、返済と借入を繰り返してきたのですが、返済ができなくなりました。破産はしたくないのですが、返済していくだけの収入もありません。何か良い方法はありませんか

A:たとえば、消費者金融などから長い間、借入と返済を続けてきた人は、弁護士に委任することで逆にお金を返してもらうことができる場合(過払金返還請求)があります。その場合であれば、返してもらったお金で任意整理ができることもあります。詳細はご相談下さい。
 
消費者金融業者などでは、利息制限法を超過する利率で契約していることが一般的なので、今までの全ての取引を利息制限法上の利率で再計算すると支払いすぎになっていることがあります。その場合に過払い金の返還請求をします。
 たとえば、分かりやすく説明すると、仮に、100万円を借りて、計算の便宜上、違法ですが年利を30%として、1年ごとに30万円を支払うという契約であった場合、毎年30万円きちんと支払っても、何年経っても借金の額は100万円から減りません。しかし、これを年利15%で計算し直すと、1年目に30万円支払うと借金が85万円となり、2年目に30万円支払うと、借金は67万7500円になるというように、長い期間返済をしているほど借金が減ることになります。このように利息制限法の利率で計算し直してマイナス(=過払)となった分を返還請求するというものです。
 なお、既に完済した債務が残っていない金融業者に対しても、時効になっていない限り、支払いすぎになっている分を返還してもらうこともできます