Q&A抜粋 

(相続について)
Q:相続に関する法律問題にはどのようなことがありますか
A:検討すべき問題として、たとえば概略次の点が考えられます。

(相続開始前の場合)

遺言書の作成


 自筆証書遺言(全文、日付、氏名全て自筆で押印があるか。内容が特定しているか。偽造変造を争われないか)

 公正証書遺言(争われにくい。公証役場で確認できる等のメリット。証人二人必要。)

 遺留分について配慮したか(後日の紛争の予防。生前贈与との関係。遺産評価との関係。)

 注意:遺留分の放棄許可申請(生前に家庭裁判所への申請が必要。生前贈与との関係。)

 注意:遺言執行者の定め(遺言の趣旨を実現するために)

事業承継対策(相続問題で事業承継に支障が生じないよう長期計画を)

任意後見(意思能力に問題が生じたときに備える)cf成年後見

相続時精算課税制度などの税務対策


(相続開始後の場合)

 遺産の範囲・遺産分割対象は明確か(特別受益。生命保険受取人などの固有財産との区別ができているか。)

 遺産の評価は適正か(相続税申告との関係)

 遺言書のある場合
  遺言書は有効か
  より日付の近い遺言書はないか。
  公正証書遺言がないか公証役場で確認したか
  ★遺留分減殺請求(1年以内)

 遺言書のない場合
  
法定相続人は誰か
  遺産分割の方法(協議・調停・審判)
  特別受益
  寄与分

 注意:相続放棄・限定承認の検討(放棄の期間、単純承認事由)
 注意:相続人不存在の場合(相続財産管理人)
 相続税申告など

遺産分割について)
Q:遺言書がない場合、誰がどのような割合で遺産を相続することになるのか教えてください。

A:民法886条以下に定めがあります。概要は次のとおりですが詳細はご相談下さい。
  まず、
配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
  配偶者以外は相続順位が定められています。ここでいう順位とは、もし第1順位がいれば、第2順位以下には、相続資格がないという意味です。

  第1順位は、子とその代襲相続人です(配偶者2分の1,子2分の1)。
  代襲相続人とは、子が先に亡くなっていた場合の孫のことです。子が先に亡くなっていて孫がいれば、配偶者(2分の1)と孫(2分の1)が法定相続人となります。
  第2順位は、直系尊属(被相続人の父母等)です(配偶者3分の2、直系尊属3分の1)。
  第3順位は、兄弟姉妹またはその代襲相続人である甥、姪です(配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1)。
  法定相続人が誰もいない場合には、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらう手続があります。


Q:長男が全て自分が相続すると主張して話し合いがまとまりません。どうしたらよいでしょうか。

A:
遺言書がない場合、遺産分割協議をすることになりますが、話がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停もしくは遺産分割審判を申し立てる方法があります。通常は、調停を申し立てることになります。調停の場合は、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てることになります。



Q:遺産分割調停の概要を教えてください。

A:
調停は、調停委員を間に入れて話し合いをする場です。調査官が関与することもあります。
  遺産分割調停では、手続上は次の5つの点がポイントになります。
  @、相続人の範囲の確定(争いがない場合も多いです)
  A、遺産分割協議書ないし遺言書の有無、内容
  B、遺産の範囲
  C、特別受益の有無程度
  D、寄与分の有無程度
  この5つのポイントを検討した後、具体的な相続割合を割り出して、具体的な分割方法を決めるのが本来の遺産分割調停の手続です。
  但し、それぞれ法律的に判断が難しい点もありますし、感情の対立が大きな問題となることもあります。詳細はご相談下さい。


(遺言書作成について)
Q:遺言書はどのように書いたらよいものなのでしょうか。

A:
遺言書には、様々な方式がありますが、よく使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
  自筆証書遺言は、
遺言者が
自分で遺言の内容の全文と、日付及び氏名を書いて、署名の下に印を押す必要があります。しかし、自筆証書遺言の場合、偽造の疑いをかけられたり、内容が不明確であったりするなどして、もめごとを起こしてしまうこともあります。そこで、できれば公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言を作成しておくべきでしょう。公正証書遺言をするには、二人以上の証人が必要です。但し、推定相続人や受遺者などは証人になれません。予め弁護士に遺留分の問題などを含めてどのような内容の遺言書を作成するかを相談しておくとよいと思います。
 
遺言執行者に弁護士を選任しておくのも有用です。
 詳細はご相談下さい。


Q:いわゆる後継ぎ遺贈はできますでしょうか。
A:後継ぎ遺贈とは、たとえば、不動産を長男に遺贈するが、長男が死亡した後は、長男の相続人(長男の妻など)ではなく、今度は、長女に同じ不動産を遺贈するという方法です。民法上は、後継ぎ遺贈は許されないとされているといえます。
 しかし、受益者連続の信託を利用して同様の状況を作り出すことが可能です。但し、信託の設定から30年を経過した時点以降に、最初に受益権を取得した受益者が死亡するまで、またはこの受益権が消滅するまでの間しか存続しないとされています。
 たとえば、不動産を信託し、長男を受益者に指定します。この場合、長男が取得するのは不動産の所有権ではなく、信託の受益権です。そして、長男死亡後は、長男の受益権は消滅し、次は長男の相続人ではなく、長女が新たな受益権を取得すると信託行為の定めをしておく方法です(信託法91条)。但し、遺留分は当然侵害できません。



遺留分について)
Q:父が亡くなりましたが、遺言書があり、長男に全て遺産を相続させると書いてありました。次男である私には、全く相続分はないものとあきらめないといけないのでしょうか。
A:遺留分減殺請求の意思表示をすれば、遺留分の認められる範囲で、遺産上の権利が与えられます。そのためには、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年の間に内容証明郵便などで意思表示をしておく必要があります。その上で、訴訟ないし調停申立手続を検討することになります。詳細はご相談下さい。


Q:遺留分は誰にどれくらい認められるのか教えてください。
A:遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められます。直系尊属のみが相続人である場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は2分の1が遺留分として認められます。

Q:遺留分算定の基礎となる財産にはどこまで含まれますか。
A:民法1029条1項で「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除してこれを算定する」と定められています。
 この点、
 @相続開始前1年間になした贈与は当然に算入されます。
 A遺留分権利者を害することを知ってなした贈与は1年より前であっても算入されます。
 B不相当な対価をもってした有償行為は当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは算入されます(但し、対価を償還しなければなりません)。
 C相続人が受けた贈与は1年より前のものも無条件で算入されます。

Q:成年後見について教えてください。
A:法定の成年後見制度として、成年後見・保佐・補助の制度があります。
 これは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など判断能力が不十分な方に、家庭裁判所が、成年後見人、保佐人、もしくは補助人を選任し、代理権・同意権・取消権を適切に行使して、財産を管理保全したり、契約などの法律行為(施設入所契約や売買契約や預金に関する契約など)を行う制度です。
 本人、配偶者、4親等内の親族、市町村長などが家庭裁判所に申立をする必要があります。
 
後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方、保佐は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な方、補助は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な方が対象です。
 申立に、後見・保佐は本人の同意は不要ですが、補助は本人の同意が必要になります。また、法定代理権を付与するにあたり、後見は本人の同意は不要ですが、保佐・補助は本人の同意が必要です。
 本人に判断能力がないことにより、また、相手方が契約などが無効になってしまうことをおそれるなどして、生活していくために必要な契約などができない、また、本人が必要な財産管理ができない、さらには消費者被害にあったり財産を奪い取られてしまうなどの事態を防ぐために、成年後見制度は有用です。
 詳しくは、弁護士にご相談ください。
 なお、法定の成年後見制度の他に、任意後見契約というものもあります。

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